原発事故の証言
もう2年を過ぎた福島第一原発事故処理に命がけで当たった発電所所所長と現場の奮闘を描いた「死の淵を見た男ー吉田昌郎と福島第一原発の五○○日」の著者である門田隆将氏の講演を聴く機会があった。
今回の講演は内外情勢調査会の4月例会での講演であった。
講師が出版した本を中心にした講演内容であったが、90分間があっという間に過ぎてしまうほどの内容の濃いものであり、我々がマスコミなどを通じて知った内容とは比べ物にならないほどのショッキングな内容であった。
吉田所長や直接現場の当直長をしていた方々からの証言に基づく誠にリアルなお話で、あらためて事故当時の緊迫した状況とそれに対する現場での対応を知ることができた。
氏が週刊誌の記者としてスタートしデスク、次長、副部長を経てフリージャーナリスト、ノンフィクション作家として多くの人脈を作り、数々の著書を表しておられるようであるが、中でも、今回の吉田所長からの証言は実に1年4カ月にわたる粘り強い働きによって実現し、原発事故の実態を著すことができたようである。
氏が、冒頭に話されたことは、常に念頭に置いて考え、取材活動、作家としての立ち位置にしておられるのは企業には、利潤と個人、公があり、人には個人と立身出世、公がある、マスコミにも報道の使命、立身出世、それと公がなければならないと考えているとのことであった。
特に今回の原発事故では、マスコミが報道姿勢としてラベリング、類型化し、これが戦後日本のマスコミの傾向として自己陶酔型、シャッター症候群となってしまう閉鎖的な報道ではなかったのではないかといったような考え方をしておられた。
そうしたことから話が始まり、事故発生から初期段階での現場での死を覚悟しての息詰まるような対応が、現在の第一原発の現況であるようで、初期段階でのスプリンクラーによる冷却、ベントの対処などによって、日本が3分割されるような事態には立ち至っていないようである。
この3分割とは第一原発が爆発してしまうと10基ある原子炉がすべて爆発し、チエリノブイリ事故の10倍になることや、北海道と西日本は安全かもしれないが東日本はまずほとんど放射能に汚染されてしまったであろうとのことであった。
つまり3分割されてしまう状況であったとのことであった。
吉田所長には、歴史に向かって証言してほしい、日本の歴史に残る証言になることを申し上げてお話しいただいたとのことであった。
現場の方々を中心にたくさんの方々からの証言をもとにしたもので、きわめてリアルであり息づまるような講演であった。